私がホームグランドとしている福岡県北部沿岸(玄界灘)にビシ糸(地方若しくは人によってはビシマ糸ともいう。)テンヤを使用する大鯛釣りの方法が伝えられたのは、文献によると明治時代の後期に徳島県の漁師により伝わったといわれており、以来今日までの約100年にわたり、職漁者や一部の遊漁者(アマチュア)の人々により釣り方法の研究や仕掛け(道具)の改良がなされ、また、その間の仕掛けの素材のめまぐるしい発展により今日に至っております。
 
このテンヤ釣りは、生きエビのエサを使用し一切のマキエを使わないために海洋汚染の心配が無く自然環境にやさしく、また、自然の摂理に基づいた釣り方法であるといえます。
 
しかしながら、この釣り方法をマスターするためには、ある程度の修練を有することと、近年、エサとなる生きエビの入手が困難となりつつある点が、この釣り方法への門戸を狭くしており、竿釣り全盛の今日では誠に遺憾なことではありますがマイナーな釣りとなりつつあります。
 しかし、この釣り方法には中々奥の深いものがあり一度この釣り方法を覚えるとその虜となり、ぜひ将来に伝えたい釣り方法です。


 私達が釣りで使用している錘(鉛)と水深の関係は、端的にいえば正比例の関係にあり、水深の深い所では重たい錘を使用し、また、水深の浅い所では軽い錘を使用します。
 よく、錘の重さと水深の関係は、
水深1m.につき錘1号(3.75g)と一般的に言われてきましたが一方では、魚の喰いと錘の重さの関係は反比例の関係あるとも言われています。

 水深が同じの所で重たい錘と軽い錘を使用して魚を釣ると、重い錘を使って釣るとき海底に錘が着いたことがハッキリとわかります(この状態を「立ちが取れる」といいます。)
 水深が同じ所では、重たい錘を使用して釣りをすると先ほども言いましたように「立ち」はよく取れますが、魚はあまり喰ってくれません、軽い錘を使用して釣りをすると、いつ錘が底に着いたか着いていないのか判りません。
この状態を「立ち」が取れないといいます。
 しかし、
自分自身が可能な限り軽い錘を使用して釣ると、良い結果が出ると思います。
 そこで、水深の深い所でも何とか軽い錘で
「立ち」が取れないかと、この背反する矛盾した問題の解決方法はないか先人達は考えた結果がビシ糸(地方によっては「ビシマ糸」とも言う。)なのです。
 このビシ糸は、仕掛けの下の錘をできる限り軽くして、その軽くした分の錘を道糸に分散してか見つけることにより、仕掛け全体の錘の重さは変えずに下の錘
(この場合「テンヤ」を言う。)だけ軽くすることができるということです。(こうして先人達は、先程の矛盾した考えを解決しようとしました。)

 
そこで軽くした分の錘を道糸に分散して取り付ける方法として、道糸に直接{錘(鉛・この場合「ビシ」という・)を噛み付ける(以下この作業を「ビシを打つ」といいます。)ことを考え付いたのです。
 その方法は、
まず道糸に一定の間隔でビシを打つ「等間隔方式」一定の法則に従い、その間隔を変えてゆく「不等間隔方式」があります。
 一般に市販されている物は、
「等間隔方式」(機械による大量生産が可能)の物が多く、「不等間隔方式」のもは職漁者(プロ)一部の遊漁者(アマチュア)によって自作されてきましたが市場に出回ることは余りありません。
 
この「等間隔方式」ビシ糸「不等間隔方式」のビシ糸を使い比べてみた感じでは、「等間隔方式」のビシ糸は全体的に持ち重りがして水中で道糸がたるむような感じがします。
 それに対して、私は約30年来
「不当間隔方式」ビシ糸を使用していますが、潮流による糸ふけも最小限に抑えることができ、仕掛けは潮流の影響をあまり受けることも無く真っ直ぐに立ち微妙なアタリも取ることができ、両者を比較した場合、私の経験では後者「不等間隔方式」の方が使い易いようです。
 
結論から言いますと、「不等間隔方式」ビシ糸は、先(下・海底の方)が重たく、上(水面)の方を軽くすることです。
 

 私がホームグランドとしている海域は、水深が40m.から50m.と比較的浅い海域ですので、基本的に浅場用のビシ糸の作りからを説明したいと思います。
 ビシ糸の素材となる道糸は、現在市販されている船釣り用の道糸は大別すると、
テトロン系の編み込み糸(トトマスター、よつあみ、どうつきプラス)ナイロン系(「フロロカーボン」を含む。)(ラージ、シーガー、ジョイナー)があります。(シーガーとジョイナーはハリス用の糸です。)
 一般的に、ナイロン系の道糸は若干の伸びがありますが糸の水切りが良く、テトロン系の編み込み糸は伸びはありませんが、水切りはいくらか悪いように思えます。
 このように道糸本来の性質を考えると、伸びの無い
テトロン系の編み込み糸は水深が80mから100m前後の深場用に向いており、反対に40m.から50mの浅場にはナイロン系の道糸を使用しています。
 私は、
40m.から50m.の浅場ではナイロン系のシーガーの12号が水切りがよく、また、適度の伸びもあるのでこれを使用しています。
 
私の技術では、ビシ糸テンヤを使って大鯛を釣るとき、15号から20号テンヤを使う場合水深100m.前後が限界です。

 私の場合、
40m.から50m.の比較的浅い釣り場をホームグランドとしているので、シーガーの12号(50m.に特5号のビシを約70個)を使用しています。

 初心の頃又は初めて使用する
ビシ糸は、まず使用しているビシ糸自体の重さを感じ取る練習をしてください。
 ビシ糸自体の重さがわかるようになり、更にかすかに重さ
(テンヤ)を感じる所が海底で、このことを「立ちが取れた」と言います。
 
 
このビシ糸には、一人一人ポリシーがありどの仕掛け(道具)が良いとは一概に言えませんが、私は以上のような仕掛けで釣っています。

 ビシ糸の作り方は、「案ずるよりは生むが安し」で、実際に挑戦してみてはいかがでしょうか。よくビシの大きさや間隔、ビシ糸の長さは秘伝等と言って勿体をつけている人がいますが、実際はそんなものはありません。広く大きな心でお互いの持っている情報を交換してより良い物を作ろうではありませんか。
 やってみると意外に簡単にできるものです。
  

 左の写真は、いずれもナイロン系(モノフィラメント)シーガー12号(上)とジョイナー12号に(下)にビシを打った仕掛けで重さは大体100g程度の軽い仕掛けです。
 この糸の特徴は、釣っているときの糸のすべりが良く船の上での糸さばきがし易いことです。
 左の写真は、水深が70m前後の所で使用している仕掛けで、よつあみパラゴン12号ビシを打ったもので、重さは大体130g前後あります。
 この糸は、伸びがありませんが水切りがよくありません。