●「田主丸だより」2004年K 3月号(最終回)●

忘れられない話があります。現在甘木市の黒川小学校跡で"共星の里"を主宰するアーティストの柳和暢さんから聞いた話です。彼は若い頃にアメリカに渡り、ライブペィンティングという独自の画法で様々なジャンルのアーティスト(その中には喜多郎、大倉正之助なども!)とコラボレーションをやって世界中を駆け回っていました。喜多郎のワールドツアーのカメラマンでもありました。

彼がオランダのアムステルダムに行ったとき、運河の船の中で生活する男がいて、とても気になったのでその船の中にお邪魔した。ものすごい数のスケッチと、無数の線が入った棒が沢山あった。『これは何ですか?』と聞くと、毎日運河の潮の満ち引きの高低差を欠かさず記録しているという。

そしてこう言ったそうです。
『お前は地球の上を飛び回ってをあちこち旅しているんだろうけど、俺はここに留まったままこうやって地球を上下に旅している。』

この言葉に衝撃を受けたそうです。数年後にその人は亡くなったそうですが、実はみんなに愛されていたアーティストでアムステルダム市民の手で葬儀が行われ、作品(針が逆に回る壁掛けの時計)は美術館に収められていたそうです。

僕もこの話には痛く心を打たれました。そういうものの見方もあるんだな・・と。僕も田主丸に来てもう9年目(だったかな?)。実はこの6〜7年は子育てが中心になってほとんど外に出る事がなかったのです。が、視点を変えてみるとここでいろいろな出会いや発見があり、『ここでこの場だからこそ』出来たことが沢山ありました。その都度この言葉を思い出しました。心の中でたくさん旅をしていたんですね。

この春から少し行動パターンを変えようと思っています。子育ても少しばかり落ち着いたので、少し外に向かって仕事を進めようと考えてます。僕のまた新しい旅の始まりです。

という訳で今回で僕の連載は最終回になります。来月からは基山で"トートト動物村"を主催する藤田さんとバトンタッチします。

実は、僕の連載の一番最初が『しりとり』の話題で始まったので、毎号最後までテーマを次回に引き継ぎながら、しりとり形式の連載だった事に気が付いたでしょうか?(どうでもいい事ですけど・・。)

それでは、またどこかでお会いしましょう。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。(終)

一年間ありがとうございました

共星の里
西日本新聞社 藤田義則さんの紹介

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