我が家の庭には池がある。川魚や金魚を入れて楽しんでいた。
ここには山の中腹から引いている山水が入るようになっていて、かなり自然に近い状態であった。
特に餌もやっていなかったが、水面に飛んで来る虫を食べていたようである。ものすごく大きくなった。丸々と太っていたが、生意気にも飛んでくる虫をジャンプして捕食するのである。たくましい野生・・。
その金魚は、保育園の夏祭りの金魚すくいで持って帰ってきたもので、3cmくらいのを5匹ほど入れていた。あっという間に大きくなって、今まで見た事がないくらい巨大化していた。
これがある日、忽然(こつぜん)と姿を消した。
金魚以外の川魚も見たところ姿を現さない・・。生き物の気配を感じない。
理由はわかっている。数日前から鷺が来ていたのだ。田んぼや畑に現れるような茶色で巨大なやつ。
家の中から庭を見ると、目の端に不思議なものが映っていた。大きな石の上に首の長い変な鳥がいる。まるで恐竜図鑑に出てくる『始祖鳥』のような風貌である。
カミさんは「あれ、あんな置き物あった?」とか言っていた・・・。いきもの。鷺だよ。
そしておもむろに池の中に入って行った。「このやろー!!」とか言いながら窓を開けて走っていくと、ゆっくりと重たそうに飛んでいった。それも遠くではなくて庭の前にある木のてっぺんに。そしてしばらくするとまた池の中に入る・・。「ん〜、このやろー!!」これをしばらく繰り返した。
「池を網で囲うか?」「捕まえるか!」などなど議論したが、何もしないまま次の日を迎えた。
さて、次の日にはすでに池の中は魚の気配がない・・・。その日からもう二度と鷺は来ない。
カミさんは言う。「詐欺だ!」そうです。その通り!
これを子供たちに説明するのが難しい。それなりに可愛がっていたので、魚がいないことにはすぐに気が付いた。
「旅に出た」
「寒いから冬眠している」
「空を飛んでいるんだ」
「あそこの山のむこうに・・・」
・・・思いつくままにウソを重ねる。
何で鷺のためにウソつかなきゃならないんだろうか?
鷺に鷽(うぐいすぢゃぁないよ。)
この金魚にはちょっと教わったことがある。
夏頃にやって来たお客さんに「うちの金魚でかいでしょ?」と言ったら
「ほんとだねぇ。金魚は小さい入れ物に入れると大きくならないけど、広いところに入れるとでっかくなるよ。」という返事。なるほど・・そうだったのか。環境によって潜在的な遺伝子が発現するかどうかという事。
これについて夫婦で話し合った。我が家の子供達はどうしてこんなに馬力があるかという事。
僕もカミさんも子供の頃そんなに激しく馬力があったとは思えない。多分、こいつらは田舎でほったらかしなので、池の金魚のように潜在的な遺伝子がめいっぱい発現してしまっているんだろうという結論に達した・・・。
それはそれでいい。でもあんまりいろんな物を壊さないでくれ・・。
2002.12.23 |
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