●放浪の人3●


そしてまた彼は旅に出て、音信不通になった。由布院のホテルのオーナーに部屋と書く材料を渡されて、悠々と絵を描いていると誰かに聞いたと思うと、今度は大阪でホームレスになったとも聞いた。

そして最近彼から久し振りに電話が来た。
北海道からだった。その後の事を聞くと、どうも全国を歩き回る完全な放浪者となって、絵や詩を書き売りながら生活していたらしい。
その間、公園で寝ていて若者に袋叩きにあったこともしばしばだったそうだ。

そして様々な人に出会ったのだろう。驚いたことに、『ついに出版社に認められて、本を出すことになった。』と言う。(また騙されたのかな?)と思っていたら、『初版の1万部の1年分はすでに印税として振り込まれる。』という。ん十万円
『良かったねぇ。でもさぁ、それまとめて貰っちゃうと、またすぐ使ってなくなるでしょ?』と言うと、『月割りにして毎月銀行の口座に振り込むよう交渉した。』と答えた。

印税生活をする放浪者。

『放浪生活が安定するなぁ〜。最初の入金で、まずリヤカーを買う。これでまた全国を旅するのだ。のぼりも付けて。』だって。『お金が入ったときだけ旅館に泊まる。』らしい。

えび天うどん三百六十円 著者 島居祐示

タイトル『えび天うどん三百六十円』

発行 四谷ラウンド ¥1100(税別)


彼の壮絶な半生が非常に柔らかい言葉で綴られています。
わが町田主丸での生活も少し書いてました。

初版の1万部が売れるとまた増刷で、彼は印税で安定した放浪生活が送れるわけです。本屋さんで見つけたら買って読んでください。

そして、リヤカーを引いて絵や本を売っている放浪者を見つけたら、声をかけてください。彼に間違いないです。

曰く『地道に努力した結果が実ったよ。やはりコツコツやることだね。これを俺は覚えたよ。』

でもきっとまたその枠を壊すんだろうな。

この現代版山頭火と、今年中には再開する約束をした。


2002.08.17
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